地域活性化について、どのようにお考えですか。

地域活性化というと、地方創生のような行政主体の大がかりな施策を思い浮かべるかもしれませんね。けれども私は違います。小さなお店や地域の商店街の活性化により、まちを元気にする。それこそが私が考える「地域活性化」です。

たとえば、商店街活性化のために予算を捻出すると、「のぼりをつくろう」とか、「アーケードにして雨に濡れないようにしよう」といった、「何かをつくる」というところに話題が集中しがちです。しかし、それよりも大切なのは、それぞれのお店が持っている良いところを輝かせることなのです。

光る店(繁盛店)が1つあれば、影響されてその周辺に繁盛店が増えていくんですよ。特に東京などの大都市圏では、その傾向が強いですね。
何もなかった住宅街にポツンとおしゃれなカフェができる。そこに人が集まるようになると、その近くにもっと素敵なカフェができて、さらに人がやってくる……といった良い連鎖が起こります。

私は、大掛かりに商店街やまち全体にお金をかけなくても、繁盛店を1つ作ることができれば、地域が活気づく、まちが元気になると考えています。
地域における繁盛店をつくること、それが地域を活性させる一歩になると信じています。

なるほど。沼田さんは普段は企業のVMDコンサルティングをされていますよね。
それがなぜ、地域活性化に取り組もうと思われたのですか?

ひとことで言えば「恩返し」がしたいからです。

私は今まで、さまざまな業種・業態のコンサルティングに従事してきました。その中には大都市の百貨店や量販店、携帯電話会社、旅行代理店など、いわゆる大企業もありますが、地方の小さな企業や小売店もいらっしゃいます。

私がこの仕事をしているやりがい、喜びは、私が関わったことで「こんなに良くなったよ。ありがとう」という言葉をいただけることです。私が生きる原動力といってもいいくらいです。

地方の小売店などでは従業員の皆さんと距離が近いせいもあり、直接、言葉をかけていただくことが多く、本当に力をいただいています。
だからこそ大企業だけでなく、「予算がない」、「時間がない」けれども、「なんとかしたい」と思っている方に、「同じ思いを持った方が、成果を出すことができたんですよ」と伝えて、力になりたい。私が培ってきた今までの経験やノウハウで、「繁盛店になりたい!」と真剣に考えている方のお手伝いがしたいのです。

今後は、この取り組みをライフワークにしていきたいですね。

「繁盛店」をつくる場合、どんなことに注意を払わなければならないとお考えでしょうか?

繁盛店をつくる最終的なミッションは「売上を伸ばす」ことです。

売り上げを伸ばすためには「買い上げ客数」を上げるか「客単価」を上げる必要があります。商圏が小さい場合「買い上げ客数」をあげるために、新規のお客様を増やすことは大変です。ですので 多くのお店で工夫している例として「1人あたりの購入点数」を増やし「一人当たりの客単価を上げる」事を努力されている店主の方が多いと思います。

地方の商店には、いろいろな物が店頭に置いてあったりしませんか? 店主さんがお客様の欲しい物をしっかり理解して置いているからです。まさにコミュニケーションの賜物ですよね。お客様はあの店に行けば、自分の欲しいものが揃っているから「これも買おうかな、あれも買おうかな」ということになります。だから購入点数が増える、イコール「客単価」が上がる訳なのです。

ですから、たとえ同じ業種の店舗でも地域によって、ディスプレイもお客様への対応もまったく違ってきます。いわゆるチェーン店のようなマニュアルなどあり得ないと言っていいでしょう。とくに地方の小売店などでは、お店の立地条件やお客様との関係性によって、東京とはまったく違うアプローチが必要ですね。

個店をサポートするには時間も手間暇もかかりますが、1つ1つのお店の特性に注意を払い、正しくロードマップを描いて実行すること。それが繁盛店をつくるためには欠かせないことだと思います。

新たに取り入れたい手法もお考えだそうですね。

外国人観光客による「インバウンド消費」を活性化に活かせないかと考えています。

ここ数年、日本に訪れる外国人のお客様が急増しています。最近では有名な観光地をツアーで訪れるのではなく、日本らしさを求めて地方を旅するリピーターも少なくありません。

彼らに向けて日本の良さを伝える文化や伝統を取り入れることは、お店や地域に魅力を与えてくれるはずです。四季を感じさせる空間づくり、日本文化の根底にある慣わしを伝える小道具の選択、日本人ならではの心配りが感じられるおもてなしなど。数えだしたらキリがないくらい、多くの魅せ方ができそうです。

商売をしている方は、ご自分の地域の魅力を発掘し、地域で良さを伝えていただくきっかけにしていただきたいですね。外国の方とのコミュニケーションを深め、自分のお店や地域の強みをつくることにつながると思います。

強みをつくることが、繁盛店へのポイントなのでしょうか?

そうですね。でも「つくる」だけでなく「気づく」ことこそ大切です。実は、お店の魅力や強みに気づいていないというパターンも多いんですよ。

私がさまざまな地域でたくさんのお店の方とお話しをして思うのは、実に多くの魅力的な文化が根付いているということです。いずれは、その魅力を東京に逆輸入する架け橋になりたい。実はそれも、私が地域活性化に取り組む理由の1つなんですよ。

最後に、自分の店を輝かせたい、地域の繁盛店にしたいと考えておられる方にメッセージをお願いします。

良いお店は必ずどこにでもあります。ただ小さなお店には、ノウハウがない。それは仕方ないことですよね。100人の大企業と家族でやっている商店では、当然、使える経費も違いますし教育にかける予算もありませんから。でも、ご自分の商売に誇りを持っている志が高い人がいるお店は、きっかけがあれば伸びます。成果が出ます。その実例を私はたくさんつくってきましたし、見てきました。

「小さな店だから」「地方の商店だから」と諦めないでください。繁盛店にするために私を利用してください。私があなたの背中を押します。一緒に輝きましょう。

──本日はありがとうございました。